「あのね、お客さん」
「なんだい」
「世界一のマッチって知ってますか」
「いや知らないねえ、そんなのがあるの?」
「BENラインっていいましてね、イギリスから、ヨーロッパ、それからアジアのほうへきてる航路がありましてね。この航路の船で使ってるマッチが世界一のマッチだっていいますね」
「だけどさ、世界一ったって、いったいなにが世界一なの?どこがどう違うのかね?」
この質問に対して、彼は実に明快に答えたね。おそらく、日本広しといえども、理想的なマッチの条件を即座に述べられる人は、そう何人もいるものじゃなかろう。諸君はどうかな。
彼は答えた。
「つまり、一つはにおいがしないことですね。それから、もう一つは頭が落ちないこと」― 伊丹十三 : 『女たちよ!』 - P.185…